日本人は、昔から長生きだった?

日本人の平均寿命は、男性 77 歳・女性 84 歳( 2002 年現在)で世界一です。
1983 年に世界一になって以来、その地位は変わりません。

今から400年ほど前、戦国の武将織田信長は「人生50年・・・」と歌いました。
もちろんその時代には“国勢調査”などありませんから、平均寿命の正しい数値はわかりませんが、おそらく 50歳というのは人間の寿命のイメージだったと思われます。
しかし、この時代は日本中が戦いに明け暮れる時代でした。
死因のトップは間違いなく“戦死”だったでしょう。
そして次が、“伝染病による病死”。ペスト・コレラ・チフス・天然痘などが大敵でした。

つまり、人の命を奪うものは、寿命ではなく、本人の与り知らぬ、戦争や伝染病などの外圧でした。

そして、このような“外圧”を潜り抜けた場合、日本人は400年前も(徳川家康のように)、70歳以上生きることができました。

厚生労働省発表の平均寿命の推移

1950 年当時、日本人の寿命は当時の最長寿国オランダと比べて、男性で13歳・女性で11歳近く短かったのです。この時代の日本人の死亡原因の第 1 位は“結核”第 2 位は乳幼児の疫痢でした。
これらは、当時の日本が衛生状態があまりよくない国であったことを、示しています。

そして、そのような衛生問題が解決されると、日本人の寿命は一気に伸長し始め、十数年で西欧諸国に追いつき、追い越し、33年後(1983)には世界一に躍り出ることになります。

日本食は長寿食

平和な国になり、伝染病が一掃され、衛生状態が改善されたとき、日本人がすでにこのような状態を実現していた西欧諸国の寿命を追い抜いたのはなぜか?
この問題に関心を持つ世界中の医学者が調査し、今や定説になりつつあること、
それは“食生活”の違いでした。

そして彼ら医学者が特に注目したのは、ごはん食と発酵食品です。

ところで人が寿命をまっとうした場合、どのように死を迎えるのでしょうか?
つまり、老化による死亡原因となるものは?
いわゆる事故を除くと、ガン、脳溢血、心臓病が高齢者の死亡の3大原因です。

これらはすべて“細胞の老化”が引き金となっています。
表現を変えれば、“細胞の老化”を遅らせることができれば、ガン・脳溢血・心臓病といった“死に至る病”に罹りにくくなり、長生きする可能性が高くなるわけです。

日本人の食生活の秘密は“抗酸化作用”にあった

ずばり言います。
細胞の老化は、イコール細胞の酸化です。

酸素は人間の生命活動にとって不可欠のエネルギー源ですが、同時にそれは、触れるものすべてを酸化させていく、扱いにくい元素でもあります。酸素だけではありません。紫外線や化学物質、薬品等も細胞の酸化の元凶になります。
人体は、このような“酸化”の危険から自らを守るため、酵素という抗酸化物質を体内で作り出したり、食物を通じて取り入れようとします。
つまり長生きする食生活とは、酵素等の抗酸化物質を多く摂取する食事なのです。
その代表が“ごはん”と“発酵食品”なのです。

ごはんのパワーの源は、本当は米ぬかにあります。
米ぬかには人体に必要な種類の酵素・補酵素類の90%がある、と言われています。
ところがこの米ぬかそれだけを大量に食べても、十分に消化されず排泄されてしまいます。
米ぬかに限らず、食物繊維は決して消化しやすいものではありません。

そこで登場するのが、微生物です。
“発酵”とは、乳酸菌や酵母菌などの微生物が、生命活動を行うことです。
この生命活動の中で、微生物はいろいろなことをしますが、 人体にとって特に重要なのは、植物等を分解して、酵素類を吸収可能なものにすること、そして自ら酵素を作り出すこと、です。

米ぬかを発酵させ、その中にキュウリ・ダイコンなど様々な野菜を漬け込むヌカ漬けは、日本人が最も好み、最もたくさん食べる漬物です。
驚くことに、このヌカ漬けに猛毒のフグの卵巣を 1 年ほど漬け込むと、毒素が完全に消えます。
これは、ヌカ漬けの中で生命活動を行う微生物が、フグ毒(テトロドキシン)を、酵素の力で分解してしまうからです。(石川県ではこのヌカ漬けのフグの卵巣を、高級な食材として食べています。)

このように米ぬかを微生物で発酵させることで、日本人は米ぬかの中の豊富な酵素類を余さず体内に吸収することができ、さらに微生物たちが作り出す他の酵素も摂取できます。
その上、ふぐ毒の分解のように人体に害のある物質も、解毒して体の中から老化=酸化を防ぐ食生活で、長生きを続けてきたのです。