アレルゲンの侵入を防ぐ皮膚のバリア機能について
2021年05月19日
皮膚の構造とバリア機能について教えてください
アレルギー性皮膚疾患の治療には、アレルゲンの回避、皮膚のケア、薬物療法などがありますが、このページでは皮膚のケアについて詳しく解説します。
日本アレルギー学会が作成するアレルギー疾患における診断・治療ガイドラインのアトピー性皮膚炎の病態生理には、皮膚の機能異常としてフィラグリンやセラミドと呼ばれる表皮の角層内にある成分の低下が、アトピー性皮膚炎の病因と悪化に関係することが記載されています。
人間と同様に犬のアレルギー皮膚炎においても同じことが認められており、犬のアレルギー性皮膚炎の症状緩和には、薬物だけの治療ではなく、皮膚のケアが大切であることが認識されています。
皮膚は体の最も外側にあり、外界と体を隔てる壁です。
この壁のおかげで体内からの水分の蒸発、外界から体内への細菌やウイルスなどの微生物の侵入、異物による物理的な障害を防ぐことができます。
この機能を「皮膚バリア機能」と呼びますが、皮膚バリア機能を強化するためには、まず皮膚の構造について知っておくことが大切です。
バリア機能を持つ皮膚の構造について
皮膚は主に、表皮、神秘、皮下組織と毛包、脂腺、汗腺などからなります。
真皮はコラーゲン、エラスチンで構築されてムコ多糖で埋められており、このなかに付属器や神経、血管、リンパ管のほか、線維芽細胞と肥満細胞が分布しています。
真皮のムコ多糖は水分を保持しており、主にこれが肌の潤いをもたらしてくれます。
表皮は外界と真皮を隔てることにより、この水分の喪失を防ぐ役割を担っているのです。
表皮に目を移すと、最も外側から角質層、顆粒細胞層、有棘細胞層、基底膜細胞層という順で層構造を作ります。
真皮と表皮の間にある基底膜細胞層は、基底膜上の一層の細胞層であり、この細胞は徐々に上の層へと順番に移動して成長し、やがて角質層となります。
角質層にいたるまでに成長した細胞を角化細胞と呼び、この成長過程を「ターンオーバー」と呼びます。
角化細胞は細胞が死んだ状態となり(細胞死)、多層からなる角層を形成します。この現象を角化と言います。
角層はフィラグリン由来の天然保湿因子と、セラミドなどの細胞間脂質によって、細胞同士がブロック塀のセメントのようにつなぎ合わされており、表皮をラッピングすることで、外界と体を隔てているのです。
この角層のもつ役割こそ、皮膚のバリア機能なのです。