皮膚に発症しやすい犬のアレルギー
2020年11月04日
犬のアレルギーについて教えてください
犬の約10%がアトピー
犬のアレルギー疾患は、ほとんどの場合、皮膚に症状があらわれることが知られています。特にアトピー性皮膚炎は、犬全体の約10%がかかっているとも言われ、最も多い疾患のひとつです。
アトピー性皮膚炎の症状は、目の周り、耳介(耳たぶ)、外耳道、足の先、腋の下、足の付根(そけい部)、肘関節の屈筋側によく見られます。
主に真皮内(皮膚の奥)に炎症が発生しますが、かゆみをともなうため、上皮(皮膚の外側)にも自傷による外皮のびらん(ただれ)、痂皮(かさぶた)、潰瘍などが見られ、慢性になると上皮が硬くなり、黒色に変色した色素沈着をともなうこともあります。
アトピー性皮膚炎の次に多い食物アレルギーについても、症状があらわれるのは皮膚です。アトピーとよく似た症状を起こすことが多く、併発しているケースも少なくないため診断が容易ではありません。
アレルギーコップについて
アレルギー性の皮膚疾患の症状について考える時に大切なことは、アレルギーの「閾値(しきいち)」を考慮することです。この時よく使われるのが「アレルギーコップ」の考え方です。
すべての動物(人間も)はアレルギーに対するコップのようなものを持っていて、このコップの容量(閾値)を超えて水があふれ出した時、アレルギーの症状が起きるというイメージです。コップに入った水はアレルギーのさまざまな要因をあらわします。
直接的な原因となるアレルゲンだけでなく、体調や皮膚の状態、遺伝的なアレルギー体質なども発症の要因であり、水としてコップに注がれていきます。アレルゲンとなる物質があるとしても、基本的な体調管理や栄養管理ができていたりすることで、水があふれていなければ(閾値を越えなければ)発症せず、普通に過ごすことができます。
この観点から、獣医師が治療に取り組む時には、さまざまな要因を多面的に考慮しながら、比較的診断が容易で取り除きやすい要因から除外してみることがセオリーです。
具体的には膿皮症、マラセチア症、苔癬(皮膚が厚くなって硬くなった状態)、ノミ寄生は抗生剤などの薬物療法ですぐに治療ができて、症状を抑えることが可能です。