心内膜症(慢性弁膜症)について
2020年09月08日
心内膜症について教えてください
心内膜症とは
心内膜症は代表的な循環器の病気で、犬の場合、心臓血管系の病気の約75%を占めます。その発生は加齢とともに増える傾向にあり、中~老齢の小型犬で、雌よりも雄に多く見られます。
通常は、心雑音が徐々に聞こえるようになりますが、発生当初、多くの飼い主はそれに気がつかないでしょう。その後、病気が進行すると、運動不耐性(元気がなく疲れやすい、動きたがらない、倒れる、など)、呼吸困難、咳がみられるようになります。
さらに食欲不振や体重減少、時には失神や腹水を伴うようになって初めて、診察を受けて、心内膜症であることに気づくことが多いようです。
心内膜症がみられやすい主な犬種としては、キャバリアキングチャールズスパニエル、チワワ、ダックスフンド、パピヨン、プードルなどが挙げられます。ただし、心内膜症はすべての犬種、特に小~中型の犬種でみられます。
特にキャバリアキングチャールズスパニエルの場合、品種改良の過程で集中的な近親交配が行われた結果、致命的な心内膜症の発生率を高める結果となってしまいました。
キャバリアキングチャールズスパニエルの平均寿命は、およそ9~10年のようです。それ以上の長生きを望むのであれば、何代にもわたて病歴がないことを確認した上で犬を購入する必要があるでしょう。
心内膜症(慢性弁膜症)の原因
多くの場合、心臓の左房室弁が徐々に厚くなって、弁の働きが悪くなり、血流に乱れを起こします。その結果、血液が左心室から左心房へ逆流して、左房室弁に損傷や喧嘩を生じ、最終的にいわゆる「うっ血性心不全」の症状を引き起こします。
すると、血液を全身にスムーズに送り出せなくなるため、肺からの血液が左心(左心房と左心室)に停滞します。その結果、肺にうっ血や水腫(水がたまること)が起こって、空咳や呼吸困難がみられます。
一方、まれに、右房室弁(右心室と右心房の間の弁)に同様の異常が生じるときもあります。その場合は、血液を肺へスムーズに拍出できなくなるため、全身からの血液が右心(右心房と右心室)に停滞します。
その結果、全身のうっ血や肝腫大(肝臓の腫れ)、浮腫(むくみ)、胸水(胸膜腔にたまる液体)、腹水(腹腔内にたまる液体)がみられます。
心内膜症(慢性弁膜症)の治療
心内膜症はうっ血性心不全と同じ治療を行います。すなわち、血液検査、尿検査、X線検査、超音波検査、心電図検査などを行います。はっきりした臨床症状がなく、症状も比較的軽度の場合には、治療の必要はありません。ある程度の症状がみられる場合には、利尿薬、血管拡張薬、強心薬などを用います。
投薬による治療がうまくいけば、寿命も数年ほど延びますが、生活環境の改善も必要になります。具体的には、運動を制限してストレスのかからない環境を保ち、犬を十分に観察するようにします。通常は、塩分を制限した食事を与えるよにします。
しかし、心内膜症の完治は困難です。場合によっては、症状が急変する場合もあるため、応急処置の方法などを覚えておくようにしましょう。