水頭症について
2020年08月05日
水頭症について教えてください
水頭症とは
水頭症とは、頭蓋内の脳室系と呼ばれる部分が異常に拡張した状態をいいます。
脳室系は通常、脳脊髄液によって満たされています。ところが水頭症では、脳室が拡張している分だけ、脳脊髄液の貯留量が正常よりも増加しています。(脳室系の拡張が認められても、症状を示さない場合には水頭症とは診断されません)。なお、水頭症には先天性と後天性があります。
水頭症がみられやすい主な犬種としては、チワワ、マルチーズ、ミニチュアダックスフンド、ポメラニアン、プードル、ヨークシャーテリアなどの小型犬が挙げられます。
チワワに多く認められるのは先天性のもので、発生機序による分類では、非交通型(閉塞性)と呼ばれる水頭症です。先天性の非交通型水頭症で最も多く認められる原因は、中脳水道や左右の側脳室をつなぐ室間孔(モンロー孔)の奇形による角の狭窄(狭くなり通過障害が生じること)です。
これらの部分は正常でも狭いために、これに奇形が加わると、第三脳室や側脳室内の脳脊髄液の流れが著しく妨げられることになります。その結果、第三脳室や側脳室に脳脊髄液が過度に貯留し、これらの脳室に重度の拡張をもたらします。
拡張したこれらの脳室のために脳組織が圧迫され、圧迫された部分の脳が受け持つ機能が障害されるため、さまざまな症状が認められるようになります。
水頭症の症状
チワワに多くみられる先天性の非交通型水頭症では、嗜眠(睡眠時間が異常に長い)、沈うつなどの意識障害、運動失調、行動の鈍化、発作などの運動障害などが認められます。また、痴呆も特徴的な症状です。
さらに、眼球が眼振(眼球振盪)といって意思に関係なく動いたり、落陽現象(setting sun sign)と呼ばれる両側性(両方の眼)の外斜視になったりします。また、正常な瞳孔反射が認められるにもかかわらず、両側性の視力障害を示すこともあります。
先天性水頭症の犬では、泉門(前頭骨と頭頂骨の間)が開いたままの状態(開存)となり、特徴的に突出したドーム状の頭蓋骨を有することが多いようです。しかし、こうした泉門の開存は健康な小型犬にもみられることから、これだけで水頭症と診断することはできません。
また、チワワの場合、元々アップル・ヘッド(アップル・ドーム)と呼ばれる形状の頭蓋骨を持っているために、頭蓋の形状だけで水頭症と診断することもできません。
水頭症の治療
水頭症の診断は、一般的にX線検査、泉門が開存している場合には泉門からの超音波検査、脳波検査などによって行われますが、最も信頼性の高い検査はCT(コンピューター断層撮影)とMRI(磁気共鳴画像診断)によるものです。
脳室の拡張、泉門開存、頭蓋の形状だけでは水頭症とはいえません。あくまでも神経症状などの臨床症状が伴い、かつ、上記の検査で反応が認められる場合に水頭症と診断されます。
水頭症では、過度に貯留した脳脊髄液によって脳圧が上昇するめに、さまざまな症状が引き起こされることから、脳内圧を低下させる治療を行います。
具体的には、まず、利尿薬やステロイド薬の投与などによる内科的治療を行います。その後必要に応じて、脳室内に直接穿刺(体に針を刺して液体などを除去・採取する)して、脳脊髄液を除去する外科的処置などを行います。
水頭症の場合、何らかの治療を行っても、予後不良の場合が多いといえます。しかし、症状の改善や安定がみられた例もあるようです。