ミネラルウォーターを与えてもよいのですか?
2019年05月02日
硬水のミネラルウォーターは好ましくありません
「ペットボトルに入っている水はすべてミネラルウォーター」だと思いがちですが、決してそうではありません。ボトルのラベルに「軟水」や「硬水」という表示がある通り、phが7以下を軟水、7以上を硬水と分類しています。硬水にはマグネシウムやカルシウムなど、犬猫の尿路結石症(尿石症)の原因となるミネラルが含まれています。ペットフードにはこれらのミネラルが十分に添加されているため、硬水を常用水にすることは、尿路結石症(尿石症)のリスクが大きくなるため好ましくありません。常用水は軟水(日本の水道水は軟水です)を使用するようにしましょう。ドライブなどで一時的にミネラルウォーターを利用する分には問題ありません。
水は最も大切な栄養素
水は全体重の約60%、除脂肪体重の約70%を占めます。また、栄養素や代謝産物を運んだり体温をコントロールするほか、消化や化学反応の溶媒、血液・リンパ液・細胞中の主成分であるなど多様な役割があるので、動物は10%程度の脱水で死に至ることがあります。そのため、1日に必要な水分量は、損失を補うものでなければなりません。
体外への水分の排泄は尿によるものがほとんどで、便中へは大腸での水分の再吸収に異常がある以外はそれほど多くありません。その他に皮膚や呼吸からの不感蒸泄(発汗以外の水分喪失)による損失があります。犬や猫では人のように全身で発汗することで体温調節ができないため、気温や湿度が高い季節のバンティング(舌を出してハァハァさせる呼吸法)はその損失量をさらに増加させます。
犬や猫の水分摂取源は、食事中に含まれる水分、代謝水(体内で栄養素がエネルギーになる際に生成される水)と飲料水です。しかし代謝水は総摂取水の5~10%に過ぎないため、実際は食事と飲水からの摂取量が重要です。犬や猫は必要な水分量の70%程度を確保できればのどの渇きを覚えないため、自発的に水分摂取をしないと考えられています。しかし自発的な水分摂取量は、食事中の水分含有量、糖分や塩分の濃度、気温、湿度、ストレス、健康状態に左右されるため、どのくらい水分を摂取しているのか、実際はどのくらい必要なのかを把握しておくことは健康および病態管理において重要です。
つねにきれいな水を飲めるようんび水飲み場を設置しておくと同時に、不足がある場合には食事に混ぜるなどで意図的に補ってください。
猫の水分摂取
猫は水分の体内再利用効率が高く、自発的水分摂取量胃が少ないのが特徴です。そのため、尿が濃縮しやすい因子を持っています。そのうえ、冬になり外気温が下がると、水分摂取量が減って尿結石症などのリスクが増加します。缶詰のフードも利用するなどして、水分摂取を促すように心がけましょう。
猫の水分摂取を促す工夫
猫は狩猟動物であることから、動くものに反応し、また獲物をすぐに食べるため温度や風味が刺激になります。噴水式の給水器や給水皿に水を落としたり、ぬるま湯にしたり、缶詰の汁や肉のゆで汁などを加えたり、工夫をしましょう。
【水分量を増やすときの注意】
健康な動物の正常な尿は薄い黄色です。水分量を増やした結果、尿が透明になるのは与えすぎが考えられます。水分量を減らす、または少しずつ何回かに分けて与えることで尿の色にも気を配りましょう。