猫エイズについて教えてください
2019年04月22日
猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)について
猫免疫不全ウイルス(FIV)とは
FIVは「Feline Immunodeficiency Virus」の略。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は1980年代の初めに発見され、特異的な病状からヒト医学界を震撼させました。それから数年後の1980年代後半に、猫にも似た病態があることが分かり、猫免疫不全ウイルス(FIV)が発見されました。HIVもFIVもレトロウイルス属に分類され、ウイルスのDNA遺伝子が感染した個体の遺伝子に組み込まれる特殊な増殖の仕方を行っています。FIVは免疫を調整する特殊なリンパ球のみを破壊するため、その免疫バランスが崩れ、些細な感染症をも防御できなくしてしまいます。また、ウイルス表面のタンパク抗原が多頻度で変化するためワクチンを開発することはできませんでした。しかし、2002年に米国で、2008年には日本で猫免疫不全ウイルス用のワクチンが認可されました。このワクチンのお蔭で、不治の病として恐れられていた猫エイズを予防することができるようになりました。しかし、猫エイズウイルスにはいくつかの異なるタイプが存在し、それぞれのタイプによって猫エイズワクチンの効果に差があります。猫免疫不全ウイルスワクチンを接種したからといって100%猫エイズに感染しないとは言い切れません。
猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症
猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)と同じ仲間のウイルスで、猫に免疫不全を起こさせるため、猫エイズと呼ばれることもあります。感染初期は、特徴位的な症状はなく、体重減少や口内炎など、気にならない程度の症状からはじまります。比較的軽い感じの疾病が治らなかったり、重篤化して感染に気づくことが多いのが特徴で、末期は著しい体重の減少と免疫不全による日和見感染(弱い病原体による感染)のために死亡します。なお、猫免疫不全ウイルス(FIV)は、人をはじめ犬やその他の動物に感染することはありません。猫免疫不全ウイルスの感染経路は、感染猫との接触感染、特にケンカの際の咬傷は感染する確率が高いです。母子感染の報告もありますが、頻度は低いです。
猫免疫不全ウイルス感染症の症状
潜伏期は4~6週間。病期により次の5つに分類されています。
- 急性期・・・発熱、下痢、全身のリンパ節腫大が数週間から数ヶ月持続する。
- 無症候キャリヤー期・・・急性期を過ぎると数年から10年以上の臨床症状が認められない時期。
- 持続性全身性リンパ節症期・・・一部の猫では全身のリンパ節が腫大する。
- AIDS関連症候群・・・免疫異常が出現し、歯肉炎、口内炎、上部気道炎などが起こる。
- AIDS期・・・免疫不全ウイルス感染末期になると、著しい体重減少、日和見感染などが起こる。日和見感染としては、クリプトコックス、皮膚糸状菌、トキソプラズマ、一般常在細菌など健康な動物では感染症を起こさないような病原体により致命的な状況となる。
猫免疫不全ウイルス感染症の治療
現在のところ、FIVを体内から一掃してくれる夢のような猫免疫不全ウイルス感染症の特効薬は存在していません。
さまざまな症状が出現するので、それに合わせて対処療法を行います。輸液をはじめ、抗生物質なども使用します。