腎不全について教えてください
2019年04月08日
犬や猫の腎不全について
腎臓とは
腎臓は血液をろ過して尿を生成することによって体内の老廃物を排泄したり、水や電解質を調整したり、さらい造血・血圧調整・骨代謝といった内分泌機能も担っています。これらは「体の中を一定の状態に保つ」ための腎臓の重要な役割です。犬も猫も腎臓は左右2つあり、腎臓で生成された尿は、尿管を通り、膀胱に一時的に溜められ、最終的に尿道から排出されます。この尿の通り道は尿路(泌尿器)と呼ばれる。猫は腎臓や泌尿器系の病気に罹りやすい傾向にあります。
腎不全とは病気の名前ではなく、腎臓の機能が25%未満に低下した状態を指します。腎不全には急性腎不全と慢性腎不全があります。
急性腎不全
腎臓は、糸球体、ボウマン嚢、尿細管からなるネフロンが多数集まって作られていますが、この個々のネフロンの機能が急激に低下したものが急性腎不全ということになります。急性腎不全は原因の存在部位によって3種類に分類されます。
- 腎前性急性腎不全・・・高度の脱水や心疾患による心拍出量の減少などによって、糸球体への血流が減少したもの。
- 腎性急性腎不全・・・鉛・砒素・除草剤などの腎毒性物質の摂取、感染症、ヘモグロビンやミオグロビン尿症などによってネフロンが傷害されたもの。
- 腎後性急性腎不全・・・尿路が閉塞を起こした場合や、尿路損傷によって、尿が尿路外の体内に漏れ出たもの。
腎前性や腎後性の急性腎不全は、早期治療により回復する可能性はありますが、治療が功を奏さないと発症して数日で死亡します。腎性急性腎不全は腎実質障害が治癒しない限り回復しないため、回復させられるとしても時間がかかることが多く、回復までの間、透析療法が必要になったりします。回復しても慢性腎不全へ移行する場合もあります。
急性腎不全の症状
排尿がみられない、または尿が出ないという症状とともに、元気消失、食欲廃絶、嘔吐、虚脱や痙攣といった尿毒症の症状が現れます。
慢性腎不全
機能しているネフロンの数が減少したものが慢性腎不全であり、機能を廃絶したネフロンは通常の治療で元に戻ることはありません。急性腎不全の治療後、十分に腎機能が回復しないと慢性腎不全に移行するので、急性腎不全の原因は全て慢性腎不全の原因となります。
犬の慢性腎不全の原因としては、糸球体性腎炎が最も多く、糸球体性腎炎の原因には、感染症・腫瘍性疾患・自己免疫性疾患・内分泌疾患・遺伝性疾患などがあります。
猫の慢性腎不全の原因としては、過去のウイルス感染や尿石症などに伴う慢性腎炎、加齢に伴う腎機能低下などが挙げられます。
慢性腎不全の症状
腎臓はその機能の75%以上が障害されてからでないと血液検査結果は異常値を示しません。よく見られる初期症状は、「多飲多尿」です。薄い尿が大量に出るので尿臭もなくなってきます。必要以上に尿がでるため、飲水量が増えていても脱水状態になっていることが多いです。病態が進んでくると元気消失・食欲低下・体重減少などがみられるようになります。さらに病態が進行すると、よく寝ていることが増え、嘔吐・下痢や便秘・痙攣といった尿毒症の症状がみられます。
慢性腎不全の治療方法
急性腎不全と異なり、慢性的にダメージを受けた腎臓の組織が回復することは不可能です。慢性腎不全の初期治療の目的は、残っている正常なネフロンに負担をかけないようにすることにあります。フードは腎臓の負担になりやすいタンパク質やリン、塩分などを抑えたものがよいでしょう。ただし、犬や猫はもともとタンパク質の要求量が多いので、極端な制限は避けるべきです。適切な脂肪酸、ビタミン、ミネラルなどを添加する必要もあります。慢性腎不全の犬や猫に対しては、信頼のある腎臓療法食に切り替えることが推奨されます。適切な食事療法を行えば、尿毒症になるまでの期間や生存期間を延ばすことができます。