肥満細胞腫について教えてください
2019年03月22日
犬の肥満細胞腫について
犬の肥満細胞腫は、体の様々な部位に発生しますが、主に皮膚や皮下に病巣を形成します。肥満細胞腫は、皮膚腫瘍全体の7~21%を占めていて、発生平均年齢は8歳以上の犬に多く認められています。
犬の肥満細胞腫の症状
全身の皮膚、あるいは皮下に発生する肥満細胞腫の外観は、”偽善者”といわれるように様々な形態があります。大きさは小さいものから大きいものまであり、狭い範囲に孤立しているものや多発性に広範囲に散在している肥満細胞腫もあります。一般的に境界が明瞭で脱毛が見られ、皮膚は発赤し光沢があり、時には潰瘍を伴っている場合もあります。肥満細胞腫は他の皮膚腫瘍と間違えやすいため、細胞吸引生検により診断されます。
犬の肥満細胞腫の治療
外科的に摘出が可能な部位では、外科的切除が第一選択肢となります。肥満細胞腫は外観的に境界明瞭ですが、浸潤性が強いため外科的切除は広範囲に行わなければならず、横方向、および深部もすべて3cmの辺縁を確保しなければ再発の可能性が高くなります。もし、深部に筋層などのバリアが存在しない場合や、切除が不十分なときは放射線治療が推奨されます。
猫の肥満細胞腫について
猫の肥満細胞腫は皮膚に発生するものと、内蔵に発生するものに分かれます。皮膚型の肥満細胞腫は猫の皮膚腫瘍では発生率第2位と比較的よく見られる腫瘍で、内蔵型の肥満細胞腫は主に脾臓や腸で発生し、脾臓での発生は脾腫大として確認されることが多いです。犬で見られるような臨床的な重篤な症状を示すことはまれで、軽い食欲不振や嘔吐などの非特異的な症状だけのケースが多く、腫瘍発見には時間がかかることがありますが、見通しについては犬よりは良いようです。
猫の肥満細胞腫の原因
肥満細胞は主に組織中に存在し、細胞質内に含有するさまざまな顆粒の放出によって炎症や、むくみなどの症状を引き起こす細胞のことです。この肥満細胞が腫瘍化したものが肥満細胞腫であり、人間では花粉症やアトピーなどの症状を引き起こしたりしますが腫瘍化することはありません。猫において肥満細胞腫は8~9歳程度の中高齢での発生が一般的です。
猫の肥満細胞腫の症状
皮膚に発生する肥満細胞腫は、通常孤立性で、無毛で硬いしこりとして確認できるが、5cmを超えるような大型化することはまれです。頭部や頚部に発生する傾向があり、全身性に拡大することはほとんどありません。内蔵に発生する肥満細胞腫は、主に腸管型と脾臓型に分かれ、腸管型では小腸に発生することが多く、食欲不振や嘔吐などの症状が見られます。脾臓型の症状も慢性嘔吐などですが、お腹にハリが認められることがあります。さらに脾臓型では抹消血中に肥満細胞が出現することが多く、肥満細胞症として確認されます。
猫の肥満細胞腫の治療
肥満細胞腫すべての病型において外科療法が必要となります。皮膚型の肥満細胞腫では一般的に、わずかな浸潤しか認められないとしても、再発や転移防止のためにおおきく切除されます。また、切除が不十分であったり不可能な場合は、腫瘍の制御目的で放射線治療が、全身への拡大防止のための化学療法が適用されます。皮膚型肥満細胞腫は外科治療により比較的良好な経過をたどるとされていますが、腸管型は手術による生体へのダメージが大きくなるため、外科治療は非常に困難で根治は難しくなります。しかし、これに反し脾臓型肥満細胞腫は、脾臓の摘出により良好な回復が期待できるようです。