猫の乳腺腫瘍について教えてください
2018年12月24日
猫の乳腺腫瘍とは
猫に発生する腫瘍において、造血器腫瘍(血液のガン)、皮膚に続き3番目によく見られる腫瘍が乳腺腫瘍です。
大部分が老齢の雌猫に認められ、避妊、未避妊にかかわらず発生しますが、避妊雌は未避妊雌に比べ、乳腺腫瘍の発生傾向は低いとされています。
猫の乳腺に腫瘍が発生した場合約90%が悪性腫瘍であるといわれており、強い浸潤性があり発生部位に腫瘍を形成することが多いです。
また、早い時期にリンパ節や肺などへの転移を起こすため、早期発見・早期治療は術後の状態や見通しを左右する大きな要因となります。
猫の乳腺腫瘍は、4対の乳頭の付近に硬いしこりとして認められることが一般的ですが、液体が溜まったような軟らかいしこりとしても見られることもあります。
4対の乳腺の第2、第3乳区にしこりが見られることが多いのが特徴です。
腫瘍の出現は一般的に孤立性の場合が多いのですが、多発性に存在することもあります。
しかし、これらは同時多発というより、むしろリンパ管による近隣乳房への浸潤の結果である場合がほとんどのようです。
猫の乳腺腫瘍の原因
猫において乳腺腫瘍の明確な要因の1つは加齢です。
乳腺腫瘍発生については9ヶ月~23歳で見られていますが、平均は10~12歳の老齢の猫とされていて、年齢を増すごとに確実に発生リスクは増加しているようです。
加齢以外の要因としてはホルモンの関与、特に避妊手術実施の有無が考えられますが、猫は犬ほど明確にはなっていません。
しかし、避妊猫における乳腺腫瘍の発生は未避妊のものに比べて約半分との報告もあり、避妊の有無が乳腺腫瘍発生に少なからず関与していることはほぼ間違いないと思われます。
乳腺腫瘍の見通し
乳腺腫瘍を患った猫の見通し要因は、腫瘍の大きさ、リンパ節への浸潤、悪性度、手術の完全性です。
腫瘍の大きさが2~3cmの場合、生存期間中央値は約2年であるにもかかわらず、3cmを超えると6ヶ月と極端に短くなってしまいます。
またリンパ節への浸潤では、浸潤がない場合の12ヶ月生存率は約40%であるのに対し、浸潤している場合は6%とされています。
また、潰瘍の有無もその後の見通しを左右する重要要素とされていて、潰瘍が存在する時点で腫瘍のリンパ管への浸潤は80%以上、さらに局所リンパ節への浸潤は75%という報告があります。
乳腺腫瘍の治療
猫の乳腺腫瘍の第一選択治療は外科療法です。
浸潤性が強いことを考慮して積極的な拡大切除が必要であり、片側乳腺全摘出手術あるいは段階的な両側乳腺全摘出が適応されることが多いです。
しかし、拡大切除手術を実施した後でも、猫の乳腺腫瘍においては転移の可能性は否定できないため、術後の補助治療としての化学療法が必要となる場合が多くなります。
抗癌剤の低用量投与によって、副作用を抑えながら腫瘍制御の効果が示されています。
猫の乳腺腫瘍のまとめ
猫の乳腺腫瘍は非常に厄介な癌です。
完全なる根治を狙うには早期の治療が必要になりますが、癌が見つかったときには既に大きくなっていた、といういことはよくあることです。
しかし、このような場合でも現在できる限りの治療を行い、癌を増やさないようにする緩和治療の余地は十分に残されており、猫の毎日の生活を大切にして未来に希望をつなげてください。