犬のアトピー性皮膚炎の薬物療法
2021年01月13日
アトピーの薬物療法について教えてください
犬のアトピー性皮膚炎の治療薬としてはステロイド剤がよく知られていますが、症状や状況によりさまざまな薬物を使い分けて治療を行いますので、まとめて紹介します。
軟膏による治療
局所的に一部分、あるいは体の多数の部位に皮膚症状を認める場合、副腎皮質ステロイド剤あるいはタクロリムスを含有した軟膏を用いて治療します。
副腎皮質ステロイド剤の治療は1日1回から2回として、長くても2ヶ月間を目途に使用します。
副作用として、皮膚の菲薄化やニキビ、毛包内に角質や皮脂が蓄積して生じる毛包嚢腫が認められる場合があり、皮膚症状に応じて軟膏の使用回数を減らします。
タクロリムスは急性期のアトピーには適さない
免疫抑制剤であるタクロリムスの外用は、限局性のアトピー性皮膚炎の皮膚を治すことに有効であると報告されています。
その結果は、比較的ゆっくり認められることから、急性期のアトピー性皮膚炎には適さないと考えられています。
内服薬・注射による治療
アトピー性皮膚炎の症状が全身にわたり広範囲なために、外用薬が適応にならない場合、特に中等度から重症の犬では、副腎皮質ステロイド剤、シクロスポリンの内服や、組み換え犬インターフェロンガンマの注射による治療を行います。
シクロスポリンとは
シクロスポリンは臓器移植患者の拒絶反応や自己免疫疾患の治療に用いられる免疫抑制剤。高価な薬ですが、犬アトピー性皮膚炎における有効性が副腎皮質ステロイド剤と同じくらい高い薬です。副腎皮質ステロイド剤と同様に、感染症にかかる危険性が高くなるので定期的な検診が勧められます。
インターフェロンガンマとは
シクロスポリン組み換え型犬インターフェロンガンマは日本において利用可能な注射薬です。高価ではありますが副作用がなく、犬アトピー性皮膚炎における有効性が日本での臨床試験によって確かめられています。さらなる有効性に関する詳細な検討が望まれている治療薬です。
副腎皮質ステロイド剤
副腎皮質ステロイド剤の使用の際には、はじめに多くの量を与えて炎症を抑えながら、徐々に減量します。
副腎皮質ステロイド剤には多くの副作用があることが知られていますが、皮膚感染症にかかりやすくなる副作用は、飼い主にとってアトピー性皮膚炎の症状が再び生じたと勘違いしてしまう場合があり、注意が必要です。
長い時間、効果が持続する長期作用型の副腎皮質ステロイド剤の注射薬は、副作用が生じやすい観点から使用は推奨されていません。
しかし、適切な量を守れば、副腎皮質ステロイド剤は安価で有効性の高い薬だと考えられています。この場合、愛犬の健康管理のために、皮膚や泌尿器、血液の検査を定期的に実施することが勧められます。