犬のアレルギー疾患の治療方法
2020年11月11日
アレルギー治療について教えてください
愛犬がアレルギー性の皮膚疾患であると診断されたら、治療の方針を決め、実践していくことになります。
ハウスダストマイトや花粉など環境中のアレルゲンによるアトピー性皮膚炎だと考えられる場合、治療の方法は大きく分けて「アレルゲンの回避」「減感作療法(免疫療法)」「薬物療法」があります。さらに最近は、皮膚そのもののケアも重要視されるようになっています。
また、食物がアレルゲンであると考えられるケースでは、これまでに食べたことがないタンパク源と炭水化物源を含んだ食事を与え、症状がどう変化するかを見守る「除去食試験」を実施して、要因となる食物を探ります。
獣医師は飼い主の負担を考えながら、さまざまな治療法のなかからその犬に合ったものを組み合わせて治療を進めていきます。
アレルギーを完治させることはむずかしい
アレルギーによる皮膚疾患の治療は、何より根気が必要です。原因となるアレルゲンを特定し、症状の改善につなげるまでには時間がかかります。
さらに、一度発症したアレルギーは完治することがほとんどなく、治療が進んで皮膚の症状が改善した後でも、アレルゲンに触れたり体調が悪化したりすることで再び発症してしまいます。犬のアレルギー疾患は、愛犬の一生涯にわたってつき合っていくことが求められる病気と言えます。
飼い主は一刻でも早く愛犬のかゆみがなくなり、炎症が消えることを期待するものです。大体、治療をスタートしてから3週間ぐらいすると、なかなか回復しないことに焦りを感じてくるようです。
これが獣医師への不信感につながると、治療をスムーズに進めることができなくなってしまいます。なかには動物病院を転々として、そのたびに別の治療を試しても上手くいかずに症状を悪くしてしまう、というケースもあるようです。
一方、飼い主がアレルギー疾患を正しく理解して、上手にコントロールして症状を抑えることで、愛犬は一生快適に暮らしていくことが可能になります。そのためにも、飼い主と獣医師がよくコミュニケーションをとって、信頼関係を築いていくことが必要なのです。
アレルギー疾患の治療法
<アレルゲンの回避>
アレルギー反応の原因となっている環境中にあるホコリ、花粉、ノミ、ダニなどをできる限り遠ざけます。飼い主は犬と暮らす部屋を清潔に保ち、ハウスダストの発生をなるべく抑える工夫が必要になります。ただし、環境中に存在するアレルゲンを完璧に除去するのは不可能です。あまり完璧主義にならないように、できる限りの実践をするようにしましょう。
<薬物療法>
アレルギー疾患には、主に以下のような薬が用いられます。
副腎皮質ステロイド剤
抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤
シクロスポリン
必須脂肪酸、漢方薬
<減感作療法(免疫療法)>
減感作療法とは、原因となるアレルゲンのエキスを犬に少しずつ、次第に量を増やしながら注射をして、アレルゲンに対する反応を軽減していく治療法です。これは比較的新しい治療法ですが、効果があらわれるまでに1年以上を要するケースもあって、導入している動物病院はまだそれほど多くはありません。
<皮膚ケア>
皮膚や被毛が不潔であったり乾燥しすぎていたりすると、アトピー性皮膚炎の炎症を助長します。過度なシャンプーで体の表面を清潔にして最近やアレルゲンを除去するとともに、皮膚を乾燥させないように保湿剤やリンスを使用することがあります。
<除去食療法>
食物アレルギーと推測される犬に対して行う治療で、これまで食べたことがない食材を使った食事を与えます。市販されている専用の処方食のほか、新奇のタンパク源と炭水化物源を1種ずつ選んで手作り食を与えることもあります。除去食を3~10週間継続して症状の変化をチェック。改善が見られるようであれば、もう一度以前の食事に戻します。症状が再発すれば食物アレルギーとほぼ特定され、アレルゲンとなる食物を除去した食事の実践による治療を進めていきます。