アレルギー疾患の診断について
2020年10月21日
アレルギー検査について教えてください
アレルギー検査はあくまで推測
皮膚のかゆみ、炎症があると言っても、すべてがアレルギー性のものとは限りません。ダニや細菌に感染したことによるものや皮膚の乾燥によるもの、膿皮症、毛包炎といった皮膚疾患、あるいは内蔵の病気からくる皮膚の異常など、まずは別の要因も含めた大きな視点で症状を見分けます(鑑別診断)。
診察では、訪れた犬の症状を観察すると同時に、飼い主の話がとても重要な情報になります。皮膚疾患の原因を高い精度でつきとめるためには、いつも一緒にいる飼い主が愛犬をよく観察して、獣医師に適切に情報を伝えることが大切なのです。
この時、飼い主から獣医師に伝えたい項目をまとめたものが「5W1H」です。これは獣医師に対して飼い主にどのような問診をすればいいかを指導するときに使う項目ですが、裏を返せば飼い主がこれを上手に伝えてくれれば、診察がスムーズに進みますので獣医師はとても助かるはずです。
できれば受診する前に、これらの項目についてメモをしておくと伝え漏らしがなく、より正確な診断につながります。
アレルギー診断時に獣医師に伝えること
What(どんな症状?)
皮膚の状態はもちろん、下痢や嘔吐はないか、食欲はあるかといった健康状態をチェックして、気になることはすべて伝えましょう。
When(いつ?)
発症時期はいつ頃で、発症する季節はいつか。またかゆがる時間帯や気候なども。もし食後の発症であれば、食物アレルギーの可能性もあります。
Why(なぜ?)
犬がよく観察して、かゆがる「きっかけ」を探る視点を持ちましょう。即時型のアレルギーの場合は特に、アレルゲンと接触して15~30分後の短い時間で発症するため原因の特定につながりやすいです。
Where(どこで?)
どのような場所で発症しやすいか。室内でかゆがるのか、屋外に出かけるとかゆがるのか。室内のハウスダストマイトが原因なのか、あるいは屋外の花粉などがアレルゲンなのかなどが推察できます。
Who(犬種や年齢は?)
どんな犬なのか。アレルギー発症にかかりやすいとされる犬種もいます。また犬の年齢によっても、かかりやすい疾患は異なります。
How(どのような?)
これまでにどのような治療を受けたことがあるか、どのような薬を処方されたかなど、病歴をしっかり伝えましょう。
アレルゲンを正確に特定する検査はない
IgE検査とは
獣医師は飼い主からできる限りの情報を集めた上で、アレルギー性の疾患が疑われる場合に「IgE検査」という血清学的検査を実施して、アレルゲンを探ることがあります。
この検査は体内に異物(抗原)が入ってきた時に、免疫機能の働きで血液中に作られる抗体のなかで、アレルギーに関係するとされるIgE抗体の濃度を測定する検査です。アレルゲンと考えられるさまざまな物質について、IgE抗体の反応を調べることが可能です。
ただし、IgE抗体とアレルギー性疾患の相関性は必ずしも明確に実証されているわけではなく、これはあくまでもアレルゲンを推測するための検査です。
他にもさまざまな検査の方法がありますが、アレルゲンを正確に特定できる検査は現在のところありません。検査はあくまでも獣医師が原因を推測するためのものであることは知っておきましょう。
このように問診と検査によって情報を集め、まずその犬がアレルギーなのかどうか、もしアレルギーであった場合アレルゲンは何なのかを診断し、治療へと結びつけていきます。