膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)について
2020年08月28日
膝蓋骨脱臼について教えてください
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)とは
膝蓋骨脱臼とは、犬の代表的な外科の病気で、膝蓋骨、つまり「膝のお皿の骨」が正常な位置から外れた状態をいいます。
交通事故、転落、咬傷などといった後天性の原因も挙げられますが、ほとんどの場合は、先天性によるものと考えられます。後天性では、片側性(片肢のみ)が多いようです。先天性では、片側性に加えて両側性(両肢とも)も少なくありません。
飼い主が犬の異常に気づく時期は、一般的に症状の程度によります。症状が軽い場合、若齢から老齢まで発症時期はさまざまです。これは本来、膝蓋骨脱臼の素因を持っていた犬が、何らかの原因によって発症するケースが多いためで、一度発症すると脱臼が習慣化します。
中程度の場合は生後2~7週ころの発症が多く、膝蓋骨が脱臼したままの重度の場合は生後2~3週の子犬が歩行を始めるころ、飼い主がその異常に気づくようです。時には、出生直後に異常が発見される例もあります。
膝蓋骨脱臼がみられやすい主な犬種としては、内方脱臼はトイ種、ミニチュア種に多く、パピヨン、チワワ、マルチーズ、ミニチュアプードル、ポメラニアンなどにみられます。外方脱臼は大型犬種に多く、ゴールデンレトリバー、グレートピレニーズなどにみられます。前反膝は短足の小型犬に多く、ダックスフンド、バグ、シーズー、ヨークシャーテリアなどにみられます。
重要な膝蓋骨
膝蓋骨は、大腿四頭筋群や膝関節に付随するさまざまな腱(骨格筋を骨に付ける組織)や靭帯(骨同士をつなぐ組織)と連動しながら大腿骨滑車溝を移動しています。
具体的には、大腿四頭筋群の伸縮をスムーズにするとともに、膝関節に付随する腱や靭帯にかかる力を分散させます。そして膝関節全体、ひいては後肢全体の運動をスムーズにする働きも有しています。
したがって、膝蓋骨脱臼は、単に膝関節を形成する一つの骨の異常にとどまらず、膝関節の買う組織や後肢全体に影響を及ぼす結果となります。なお、慢性化した膝蓋骨脱臼の12~20%に、前十字靭帯断裂が認められるといわれています。
膝蓋骨脱臼の診断
膝蓋骨脱臼の診断は、膝蓋骨の触診を行います。膝蓋骨を親指と人差指ではさんで、その可動性を確認します。また、膝関節を伸ばして、膝蓋骨が脱臼していると思われる方向に脛骨を回転させてみます。膝蓋骨が脱臼していれば、膝蓋骨を正常な位置へ押し戻すことができます。
触診の際に動物が痛がるような様子をみせたり、異常音が認められれば、慢性化していることが考えられます。
膝蓋骨脱臼の治療
軽度の場合、筋力トレーニングを行うことによって、健康な犬と同等の歩行を得ることも可能です。しかし、外科的処置(手術による治療)が必要になることの方が多いようです。また、再発する可能性もあるため、手術後も十分な管理が必要になります。