日光皮膚炎について
2020年05月27日
日光皮膚炎について教えてください
日光皮膚炎とは
日光皮膚炎とは、夏季など紫外線の強い季節に認められる皮膚炎です。日本では5月~9月ころに最も多く認められます。しかし冬季でも、雪の多い地域で飼育されている犬の場合は、雪に反射した紫外線を多量に浴びることから、日光皮膚炎の発生が認められる場合があります。
最初の病変は、鼻部の有毛・無毛部分の境界や、鼻翼面全体に発現します。その後は、被毛の少ない顔面・耳・腹部などに多く発現します。色素が脱失して灰白色(灰色がかった白色)になった状態や、紅斑(毛細血管の充血で皮膚が赤くなること)が認められ、やがて、陥没して縮んだ面を形成します。鼻翼の特徴ある鼻紋は失われ、びらん(表皮がただれて湿潤したもの)、水疱や嚢胞を伴う潰瘍、かさぶたの形成などが認められます。
重症になると、鼻軟骨の変形を生じることもあります。症状は、紫外線の量が減少する季節になると、自然に治癒するか、あるいは、ひとまず症状がなくなり落ち着きます。
日光皮膚炎がみられやすい主な犬種として、コリー、シェットランドシープドッグ、シベリアンハスキー、ジャーマンシェパードなどが挙げられます。
なお、コリーの日光皮膚炎では、鼻部に限定した症状の場合「コリーノーズ」と呼ばれることもあります。
日光皮膚炎の原因
紫外線は、動物にとっても、皮膚に有害な物質です。そのため皮膚には、自らを紫外線から防御する一定のしくみが存在しています。
皮膚に到達する紫外線は、まず被毛によって、ある程度遮られます。皮膚の最表層にある角質層で反射されることによって弱められます。さらに、被毛や上皮中に存在するメラニン顆粒は、紫外線を吸収することによって、皮膚を紫外線から守っています。
また、皮膚に含まれるカロチノイドや皮脂が、紫外線防御物質として作用することもあります。皮膚は通常、こうしたしくみによって紫外線から防御されています。
しかし、これらの作用が乱れて、日光皮膚炎が引き起こされる理由については、詳しく解明されていません。ただし、紫外線によって、皮膚を構成する細胞の核酸、膜、酵素が障害され、細胞の機能的・構造的変化が引き起こされて、細胞の突然変異や壊死(一部の組織や細胞が死ぬ)などが生じる結果病変が現れるのではないかと考えられています。
日光皮膚炎は、人間の場合と同じく犬でも有棘細胞ガンへと進行する可能性のあることは知られています。
日光皮膚炎の治療
日光皮膚炎の最良の治療は、犬を紫外線が遠ざけることです。特に、午前10時~午後4時頃までは、外出を控えて室内で過ごさせましょう。
屋外で飼っている場合は、犬の居場所の近くや運動場に日陰をつくり、犬が日向に出ないよういにしましょう。
人間用の日焼け止めクリームを使用したり、場合によっては、遮光効果のある布で作製した洋服を着せることも一つの方法です。
二次的な細菌感染を予防するために抗生物質を投与したり、炎症を抑制するためにステロイド薬を投与することもあります。